「荷物をまとめて運びたい」
そんなときに便利なのが倉庫業や小売業、運送会社など幅広く使われているカゴ台車(ロールボックスパレット、カーゴテナー、コンビテナー、カゴ車)となります。
大きな特徴は、荷台が格子状の柵で囲まれている点です。
この囲いが支えとなることでダンボールなどの荷物を積み上げても荷崩れリスクが少なくなっています。
関連記事カゴ台車とは?種類、サイズ、選び方のコツなど分かりやすく解説
そんな物流の効率化を図れる便利なカゴ台車ですが、使い方には注意しなければなりません。
実際、カゴ車を含む「人力運搬機」の労働災害事故件数は、確認されているだけでも4,000件以上発生しており、その中には死亡事故につながるケースもあります。
この記事では、カゴ台車を安全に使用するための運搬方法、荷物の積み方、ヒヤリハット事例などを紹介しています。
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カゴ台車による労働災害事故の原因
カゴ台車による労働災害で最も多いのが「カゴ台車の下敷き、転倒、転落」です。
そして、労働災害により怪我をした方で半数近くを占めるのが作業経験1年未満でした。
そのことからカゴ台車の作業に不慣れな方へのKYT(危険予知訓練)が重要になってくることが分かります。
出典:厚生労働省
カゴ台車で安全に作業するための8つのルール
カゴ台車による労災事故の多発を受けて厚生労働省所轄の労働安全衛生総合研究所より「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル(ロールボックスパレット起因災害防止に関する手引きの概要版)」が公開されています。
そこでは大きく分けて
- 段差、傾斜のある場所での取扱い
- 作業服、作業靴、保護具
- カゴ台車の基本操作
- 「押し」「引き」「よこ押し」
- 複数人での取扱い
- 荷物の積載
- 折りたたみ・組み立て・積み重ね
- テールゲートリフターでの取扱い
という8つのルールが示されてますので一つ一つ詳しくご紹介していきます。
1、段差、傾斜のある場所での取扱い
段差や傾斜は、転倒事故が起きやすい場所です。
そのため、カゴ台車を段差や傾斜のある場所で使う場合は、細心の注意を払わなければなりません。
例えば、
- 建物の出入口にあるマットの段差
- エレベーター乗入口の段差
- 歩道と車道の境界線の段差
などです。
その他、通路にゴミが落ちていたり、滑りやすい床面などでは慎重な運搬を心がけましょう。
また、カゴ台車が倒れそうになっても無理に支えようとしてはいけません。
すぐに逃げられるように繰り返しの教育訓練で身につけて転倒事故を防ぐようにしましょう。
2、作業服、作業靴、保護具
カゴ台車を安全に使用するためには服装も大切です。
作業に適した「作業服」「作業靴」「防護具(プロテクター)」を身につけるようにしましょう。
出典:厚生労働省
具体的には、
- 肌の露出がない長袖・長ズボンを着用する(スリ傷などを防ぐため)
- シャツやパンツの裾がでないようにする(引っ掛かりを防ぐため)
- 暗い場所では明るい服の着用または反射スールを着用する(衝突事故を防ぐため)
- 足のサイズに合った作業靴を選び、スリッパ、サンダル、ヒール靴は使用しない(作業中のつまずき・転倒を防ぐため)
- つま先を保護する安全靴やプロテクトスニーカーを履く(足をひかれてときの怪我を防ぐため)
- 滑り止め加工された手袋を使用する(手や指の怪我を防ぐため)
- ヘルメット(保護帽)を着用する(棚が落下したときの頭部の怪我を防ぐため)
などが推奨されています。
3、カゴ台車の基本操作
カゴ台車を安全に使用するには、正しい動かし方を覚えなければなりません。
基本操作は、
- 両手で均等に力を入れて動かす
- 手の位置は肩から腰の位置を基本にする
- 動き始めや停止するときは腕力だけでなく膝をしっかり曲げて脚力も使う
- 見通しの悪い場所では一時停止してから周りを確認する
- 動かさないときはキャスターのストッパーでロックする
です。
上記の基本操作を遵守して「足で蹴って動かす」「走ったり大きな歩幅で動かす」「複数台を連結させて動かす」「荷台に乗る」などの動作はしないようにしましょう。
また、サイドバーを持っての移動は脱落のおそれがあって危険です。
カゴ台車を使用する前は、必ず点検するようにしましょう。
カゴ台車の本体や中間棚のピンが変形しているなどの不具合が確認された場合は、直ちに使用を中止してテープを貼るなどして使用不可であることを他の人にも明示します。
4、「押し」「引き」「よこ押し」
カゴ台車を安全に動かすには、3つの基本操作を身につけることが大切です。
それぞれのメリットとデメリットを把握した上で現場の状況に応じた動かし方をしましょう。
押し
カゴ台車を両手で持って前方に押して動かす方法です。
最も基本的な操作方法であり、前歩きであることから力を入れやすく、長距離での移動時に適しています。
出典:厚生労働省
ただし、前方の見通しが良くないことから段差や第三者との接触には気づきにくいデメリットがあります。
荷崩れによる労働災害を防ぐため、原則として側面パネルを手前にして押すようにします。
見通し確保のために積載する荷物の高さは、作業者の目線以下にしておくことが推奨されています。
また、2輪自在2輪固定タイプを動かすときは、進行方向の先頭に「固定タイプのキャスター」が配置されるようにしましょう。
引き
カゴ台車を両手で持って後ろに引きながら動かす方法です。
自身が先頭に立って動かすことから第三者への接触リスクが低く、狭い場所でも移動がしやすいメリットがあります。
主にスーパーマーケットやホームセンターなど小売店の店舗内での移動で見られる動かし方です。
出典:厚生労働省
ただし、進行方向が見えにくく、後ろ向きで歩きにくいことから長距離の移動には不向きです。
また、急停止による足への衝突・はさまれ、方向確認で身体をひねるときに腰を痛めやすい点に注意しなければなりません。
基本的には、初動だけ「引き」動作を行って途中から「押し」「よこ押し」で動かすことが推奨されています。
2輪自在2輪固定タイプを動かすときは、進行方向の先頭に「旋回タイプのキャスター」が配置されるようにしましょう。
よこ押し
カゴ台車を両手で持って横に動かす方法です。
重心に近い位置で動かすことから操作性がよく、前方の見通しも良いメリットがあります。
出典:厚生労働省
ただし、坂道では操作がしにくく、初動時と停止時に力を入れにくいデメリットがあります。
そのため、初動時は「押す」「引く」で動かしてから「よこ押し」に切り替えることが推奨されています。
また、身体をひねった状態で移動することから腰への負担には注意しましょう。
荷崩れによる労働災害を防ぐため、原則として開口部側から操作しないようにします。
また、2輪自在2輪固定タイプを動かすときは、進行方向の先頭に「固定タイプのキャスター」が配置されるようにしましょう。
5、複数人での取扱い
カゴ台車を複数人で安全に動かすには、いくつかのルールがあります。
基本的なルールは、
- 作業指揮者を決める
- 衝突や挟まれを防ぐため、原則として「よこ押し」で動かす
- カゴ台車が転倒した場合は、複数人が側面を持って引き起こす
です。
複数人で動かすときは、それぞれ力の入れ具合が異なることから声を掛け合いながら、1人のときよりも慎重に動かすことが重要となります。
力の入れ具合が均等にならないことから原則としてカゴ台車は2人までの使用が推奨されています。
6、荷物の積載
カゴ台車を安全に動かすには、荷物の積み方も重要です。
基本的な点としては、
- カゴ台車および中間棚の最大積載量を超えない
- カゴ台車から荷物がはみ出さない、側面パネルを圧迫するほど積載しない
- 荷物を積み込んだらサイドバーで閉める
があげられます。
その他「重たい荷物を下に置く」「荷物の大きさがバラバラのときは中間棚を使用する」といった点に気をつけて荷物の積み込みを行いましょう。
7、折りたたみ・組み立て・積み重ね
カゴ台車のメリットの一つに折りたたんでコンパクトに収納できる点があげられます。
しかしながら、カゴ台車をを折りたたんで安全に保管するときは、いくつかの注意点があります。
具体的には、
- 転倒防止のため、組み立ててから移動する
- 狭い通路などでやむを得ず折りたたんだ状態で移動する場合は、側面パネルの内側から押して移動させる
- 斜面や風による転倒を防止するために保管するときはロープなどで固定する
です。
複数台を折りたたんで積み重ねての移動は、転倒のおそれがあることからやめておきましょう。
8、テールゲートリフターでの取扱い
出典:厚生労働省
トラックの中には、後部に荷物の積み下ろし用の昇降機「テールゲートリフター(パワーゲート)」が付いているタイプがあります。
カゴ台車をテールゲートリフターでトラックに積み下ろしする場合は、細心の注意が必要です。
厚生労働省所轄の「労働安全衛生総合研究所」でもテールゲートリフターの取り扱いについて次のような注意喚起がなされています。
テールゲートリフター使用時における労働災害のタイプを労働安全衛生総合研究所が分析したところ、「作業者あるいは荷が倒れたり、転落する」災害が全体の65%を占めることが分かりました。とりわけロールボックスパレット(カゴ台車)はテールゲートリフターでよく取扱われていますが、重たく倒れやすいこともあり下敷き等の重篤な災害に十分な注意が必要です。
出典:労働安全衛生総合研究所「テールゲートリフターを安全に使用するために」
基本事項は、
- 昇降板の最大積載重量を超えない
- 昇降板の下に入らない
- 荷物は昇降板からはみ出さず、中央に載せる
- カゴ台車の転倒を防ぐためにできるだけ水平な場所で作業を行う
です。
また、昇降板を操作する場合は、作業者は操作時に昇降板の上に乗らず、離れた場所で操作を行うことが推奨されています。
昇降板がトラックの荷台の高さにある時
カゴ台車をトラックの荷台から昇降板に移動させるときの取り扱いです。
- 昇降板のキャスターストッパーが出ていることを確認する
- 作業者の転落事故を防ぐためにトラックの荷台から昇降板の移動時は「押す」ようにする(地面を背にして移動させない)
- カゴ台車に重たい荷物を載せている場合は、転落を防止するために荷台の近くに置いてキャスターのストッパーで動かないようにロックする
昇降板が地面と設置している時
カゴ台車を地面から昇降板に移動させるときの取り扱いです。
- カゴ台車を地面から昇降板に移動させるときは段差に注意をする
- カゴ台車を地面に降ろすときは、カゴ台車を荷台側に移動してから昇降板のキャスターストッパーを足で踏んで解除。そのままカゴ台車を地面に引き出します(下部のイラスト図を参考)
出典:厚生労働省
カゴ台車のヒヤリハット事例
カゴ台車を安全に使用するためには、ヒヤリハットの共有も重要になります。
ヒヤリハットとは「危ないことが起こったが、幸い災害には至らなかった事象のこと」と定義されています。
そして、重大事故を防ぐためにもヒヤリハットの事象は、重要視しなければなりません。
ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)では、重大事故1件には「29の軽微な事故」と「300件の災害に至らない事象(ヒヤリハット)」が存在するとされています。
つまり、重大事故を防ぐにはヒヤリハットを放置すべきではないということです。
ここからは、厚生労働省が掲載しているカゴ台車に関するヒヤリハットをいくつか紹介していきます。
ヒヤリハット事例1「陸上貨物取扱業」
こちらは、カゴ台車をプラットフォームで押していたところ一緒に転落しそうになったヒヤリハット事例です。
原因としては、カゴ台車に商品を高く積み込みすぎたことで前方が見えにくかったことが挙げられます。
出典:厚生労働省
安全対策としては、
- 見通しを遮るほどの商品は積載しない
- カゴ台車を押すときはスピードを出しすぎない
- 状況に応じて作業指揮者を配置する
があります。
ヒヤリハット事例2「配送センター」
こちらは、商品の保管棚(高さ2m)から商品を取り出す際、カゴ台車のキャスターをロックせず足場にしたことでバランスを崩して転落しそうになったヒヤリハット事例です。
原因としては、マニュアルに定められている高所作業用の脚立を使用しなかったことがあげられます。
出典:厚生労働省
安全対策としては、
- カゴ台車のキャスターがロックされていたとしても足場として利用しない
- 高所作業用の脚立を開いて止め金具でしっかりと固定した状態で使用する
があります。
ヒヤリハット事例3「その他の事業」
こちらは、荷卸し作業をしている際、トラック最後尾のカゴ台車が動き始めて別のカゴ台車にぶつかって倒れて、横で支えていた作業者が転倒しそうになったヒヤリハット事例です。
原因としては、トラック最後尾のカゴ台車のキャスターがストッパーでロックされていなかった点があげられます。
出典:厚生労働省
安全対策としては、
- トラックの荷台に積んているカゴ台車には必ずストッパーを掛ける
- カゴ台車の積載終了後はストッパーの確認を作業指示に加える
があります。
最後に
今回は、カゴ台車を安全に使用するための動かし方、荷物の積み方などを解説しました。
カゴ台車は、
- 一度に多くの荷物を運ぶことができる
- 最大500kgの荷物を楽に運べる
- 折りたたんでコンパクトに収納できる
といった特徴から倉庫や工場をはじめとして、物流センター、ホームセンター、スーパーマーケット、コンビニなど幅広く利用されています。
しかし、使い方を誤ってしまうと重大な事故につながってしまう可能性もあります。
本記事で紹介した厚生労働省が公表する「ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル」「ヒヤリハット事例」などを参考にルールを定めて作業者への周知徹底を図るようにしましょう。
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カテゴリ:カゴ台車
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