物流倉庫・工場の暑さ対策を後回しにしていませんか?
物流倉庫や工場は構造上熱がこもりやすく、窓が小さくて風通しも良くありません。
そのため、夏場は室温が40℃を超え、人体に対して危険な水準の暑さになるケースがあります。
実際、厚生労働省のデータによると、令和6年の職場での熱中症による死亡者及び休業4日以上の業務上疾病者の数は1,195人にものぼります。
本記事では、物流倉庫・工場の暑さ対策を怠った際のリスクや、暑さの原因、そして効果的な対策方法について詳しく解説します。
物流倉庫・工場の暑さ対策におすすめ!
目次
物流倉庫や工場の暑さには警戒が必要
物流倉庫や工場の暑さ対策を怠ることで発生するリスクを、3つに分けてご紹介します。
1、熱中症のリスク
高温多湿かつ換気が不十分な環境下で長時間作業を行うと、熱中症のリスクが高まります。
熱中症とは、暑さや湿度の上昇などにより体温の調整機能がうまく働かず、体温が異常に上昇することで発症する状態です。
初期症状として、めまいや立ちくらみ、手足のしびれ、吐き気などが現れ、重症化すると意識障害や多臓器不全を引き起こし、最悪の場合、死に至る可能性もあります。
次の表は、気温と湿度から熱中症リスクを示す暑さ指数(WBGT)を推計した表です。
参考:日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」Ver.4
このデータが示すとおり、気温と湿度が上昇するにつれて熱中症の危険度が増します。
企業には、労働契約法第5条に定められた安全配慮義務に基づき、従業員が安全かつ快適に働ける職場環境を整備する責任があります。
また、2025年6月1日から改正労働安全衛生規則が施行され、事業者に対して熱中症対策が義務付けられています。
参考:厚生労働省 「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案」の概要について
そのため、物流倉庫や工場の暑さ対策を怠たり従業員が熱中症を発症した場合、労災認定され、下記のような事象に発展する可能性があります。
- 従業員からの損害賠償
- 労働安全衛生法違反として罰則
- 自治体からの入札指名停止処分
- 報道による企業イメージの低下
- 労災保険料の引き上げ(一定規模以上の企業が対象)
加えて、なによりも重大なのは、従業員の健康と命を脅かすという本質的なリスクです。
現場で働く従業員が安全に業務を遂行できるよう、企業として万全の暑さ対策を講じることが求められます。
2、業務効率が低下するリスク
物流倉庫や工場の暑さは、たとえ熱中症に至るほどでなかったとしても、従業員の集中力や注意力を低下させ、業務効率の悪化をまねきます。
労働者の健康に関する研究および情報交換を行う学術団体「日本産業衛生学会」では、生産性が低下することなく工場などで継続して1〜2時間の作業ができる許容度を示しています。
作業の強さ | 代謝エネルギー(kcal/h) | 許容度条件(WBGT) |
---|---|---|
極軽作業 | ~130 | 32.5℃ |
軽作業 | ~190 | 30.5℃ |
中等度作業 | ~310 | 27.5~29.0℃ |
重作業 | ~370 | 26.5℃ |
※WBGTとは、気温、湿度、日射・輻射などの周辺の熱環境を取り入れた暑さ指数です。
ご覧のとおり、作業の負荷が大きいほど許容される暑さ指数(WBGT)の条件は厳しくなります。
たとえば「軽作業」に適した暑さ指数(WBGT)は30.5℃までとされています。
これは、通常の気温で言えばおおよそ31〜35℃程度の環境に相当します。
しかし、空調のない物流倉庫や工場内では、真夏には室温が40℃を超えることも珍しくありません。
これは「軽作業」にすら適していない極めて危険な環境です。
このような過酷な環境下では、作業効率が著しく低下するばかりか、熱中症のリスクも飛躍的に高まります。
現場の安全と生産性を確保するためには、適切な暑さ対策が不可欠です。
3、離職率が増加するリスク
帝国データバンクによれば、2025年の運送・倉庫業における正社員の人手不足割合は66.4%となっています。
参考:帝国データバンク 人手不足に対する企業の動向調査(2025年1月)
その背景には、少子高齢化による生産人口の減少や、EC市場拡大による倉庫業務増加などがあり、以前と比べても人材獲得のハードルは上がっています。
また、暑い職場環境は離職率増加にもつながります。
とくに倉庫業界では、「体力的にきつい」といった理由の退職が多く、人材不足が深刻化する中で従業員の定着を図るためには、職場環境の暑さ対策は必須です。
物流倉庫や工場が暑くなる原因
物流倉庫や工場は、オフィスビルと比べて暑くなりやすい環境です。
その主な原因として以下があげられます。
- 冷房が効きにくい
- 直射日光の影響
冷房が効きにくい
物流倉庫や工場は、施設規模が大きく冷房効率が悪くなりがちです。
特に物流倉庫では、パレットラックなどを活用して物品を保管することから、一般的なオフィスビルと比べて天井も約2倍ほど高くなっています。
空間が広くなれば、それだけ冷やすべき範囲も大きくなり、冷房が効きづらい状況となります。
また、保管物の日焼け防止のために窓が少なく、風通しが悪くなる傾向もあります。このような構造により、室内にこもった熱が逃げにくくなっています。
直射日光の影響
物流倉庫や工場では屋根や壁が薄い傾向があり、太陽光による熱が伝わりやすい構造となっています。
特に屋根は金属製で凸凹の折板屋根が採用されることが多く、直射日光によって約70〜80℃まで熱せられます。
このように熱くなった屋根からは、赤外線の形で熱が建物内に放たれます。
これが「輻射熱(ふくしゃねつ)」と呼ばれるもので、室内の温度を大きく上げる原因の一つになります。
日本の夏は年々暑くなっている
厚生労働省の発表では、日本の熱中症による死亡者数は年々増加しています。
これは、昔と比べて日本の平均気温が上昇しているためです。
気象庁の発表によれば、日本の平均気温は1991年から2020年の30年間で+0.60℃上昇しています。
参考:気象庁 日本の年平均気温
厚生労働省の発表では、日本の熱中症による死亡者数は増加傾向にあります。
これは、気象庁の発表にもある通り日本の平均気温が長期的に上昇していることが大きな要因です。
以下のデータが示すように、1991年から2020年の30年間で+0.60℃上昇しています。
「わずか0.6℃?」と思われるかもしれませんが、日常生活への影響は非常に大きいものです。
たとえば東京では、1980年代には35℃を超える猛暑日は年に1日あるかどうかでしたが、近年では年間10日以上が当たり前になり、2023年には22日と過去最多を記録しました。
ヒートアイランド現象で都市部の上昇が目立つ
都市化に伴って森林、草地、水田などが減少したことでヒートアイランド現象による気温上昇の影響も大きくなっています。
次の図は、環境省が公開する近畿地方での真夏日(30℃以上)の合計時間の変化を示したものです。
1980年代は、30℃を超えるのは大阪湾や京都盆地といった一部地域で年210時間程度でしたが、2000年代には広範囲に広がりました。
真夏日が年間400時間を超える地域もでき、昔と比べても明らかに暑くなっていることが分かります。
そのため、従来と同じ暑さ対策では不十分です。
従業員の健康面だけでなく、作業効率を落とさずに仕事ができるように暑さ対策を行う必要があります。
物流倉庫・工場の暑さ対策
ここからは、物流倉庫・工場の暑さを軽減するための方法を、作業者向けと施設の設備向けに分けてご紹介します。
物流倉庫・工場の暑さ対策~作業者編~
十分な休憩と水分補給
まず、大切なことは十分な休憩と水分補給です。
厚生労働省の指針では、人間の体は1日に約2.5Lの水分を補給する必要があるとされています。
そのうち半分程度は、食事から摂取できることから、残りの約1.2Lを飲み水から補給しなければなりません。
そして、体を動かす作業をした場合は、通常よりも多くの汗をかき水分が失われます。
のどの渇きを感じていなくても、こまめに水分補給を心がけましょう。
大量に汗をかいたときは、塩分を含んだスポーツドリンクを取り入れてみることも効果的です。
空調服(ファン付き作業着)
空調服とは、小型ファンが内蔵された服のことです。
基本的には充電式のバッテリーで小型ファンを稼働させて、外気を取り込んで服の中で空気を循環させることで涼しさを生み出す仕組みになっています。
このとき、服の中でかいた汗が蒸発して気化熱により体温を下げます。
物流倉庫・工場の暑さ対策~設備編~
スポットクーラー(移動式エアコン)
スポットクーラーとは、一般的なエアコンと同じヒートポンプの仕組みで動く冷房機器です。
一般的なエアコンは室内全体を冷やすことを目的にしていますが、こちらは冷やしたい場所(作業スペース、休憩室など)をピンポイントで冷やします。
設置工事が必要なく、キャスター付きであれば簡単に移動可能です。
業務用の大型扇風機(工場扇)
低コストで気軽に導入できるのが業務用の大型扇風機です。
家庭用の扇風機と比べて羽のサイズや回転スピードも速く、首振りにも対応していることから広範囲に風を届けられます。
導入コストが安く、消費電力が1時間あたり1〜3円と省エネな点も大きなメリットです。
業務用冷風機(移動式インバーター水冷扇)
業務用冷風機(移動式インバーター水冷扇)とは、水と少しの電力を利用して冷風を送り出す空調設備です。
業務用の扇風機では、広範囲に風を送り出せますが、風は温かいままです。
一方、スポットクーラーは冷たい風を送り出せますが、非常に狭い範囲にしか届きません。
弊社が販売する業務用冷風機(移動式インバーター水冷扇)は、最大20m先まで冷えた空気を届けることができます。
冷却は、気化熱の原理を利用しているため、エアコンと比較して光熱費を約4分の1に抑えることができます。
次の表は、代表的な空調設備と比較した一覧表です。
冷風機 | 扇風機 | スポットクーラー | エアコン | |
---|---|---|---|---|
光熱費 | ◯ | ◎ | ✕ | ✕ |
風の冷たさ | ◯ | ✕ | ◎ | ◎ |
風の強さ | ◎ | ◯ | △ | △ |
設置の手間 | ◯ | ◯ | ◯ | ✕ |
「業務用エアコンの設置はコスト面で厳しい。」
「光熱費を抑えつつ広範囲に冷たい風を送って、熱中症対策をしたい。」
そんな方に業務用冷風機(移動式インバーター水冷扇)は、おすすめです。
大規模空間の空調システム「PUT IN PUT OUT(プットイン プットアウト)」
弊社が販売する業務用冷風機(移動式インバーター水冷扇)は、特定の範囲内の冷たい風を送り込む冷房設備です。
建物全体の冷房効果を高める場合は、本製品と全体換気装置を組み合わせる大規模空間の空調システム「PUT IN PUT OUT(プットイン プットアウト)」をご検討ください。
こちらは、1時間あたり20,000㎡の換気能力がある大型換気扇を天井までの高さ約55~65%の範囲に配置する特許取得済(特許6892366号)の空調システムです。
業務用冷風機(移動式インバーター水冷扇)で涼しい空気を送り出し、換気扇で熱い空気を屋外に排出することで屋内を快適な環境に生まれ変わらせます。
光熱費を抑えて、冷たい風を広範囲に送る
まとめ
物流倉庫や工場における暑さ対策は、従業員の健康を守り、業務効率を維持するために不可欠です。
業務用冷風機(移動式インバーター水冷扇)は、その効果的な解決策の一つとなりえます。
弊社では、この業務用冷風機(移動式インバーター水冷扇)の導入実績が豊富にあり、機器の選定からのご相談も承っております。
物流倉庫や工場の遮熱・冷却等の対策についてもお悩み事がございましたらお気軽にご相談ください。
カテゴリ:暑さ対策
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